のらくら備忘録

忘れたくない事と忘れたい事を書く。節約とポケモンが趣味の浪費家。

映画ゆるキャン△を見た感想の話

ガッツリネタバレを含みます。

映画の日に映画を見に行く様にしている生活3ヶ月目。黙ってても映画は観に行くのだが、わざわざ出向くという体験は楽しい。


胸の詰まる映画だった。
これは社会で働きながら生きていく、我々の為の物語なのだろう。
なんだか胸が詰まって、熱くなってしまった。

日本のアニメーションは「子供時代の学生時代」を描いて終わってしまうことが多い。学生だけが最高とでもいわんばかりで、登場人物達の人生はそこで終わる。登場人物達は永久に歳を取らず高校生のままで、幼いままで私たちの中に生き続ける。

映画ゆるキャン△は、彼女らが大人になり、社会に揉まれながら、3年が経過したところで物語は始まる。働き出した頃って忙しいし、とにかく覚えることがたくさんで、大変だったと記憶している。
就活〜新卒一年目が人生で一番辛かった。
リンちゃんがどこにでもいるサラリーマンだったということがこの映画のメッセージ性を高めていると思う。
毎日毎日通勤して、一生懸命働いて、上手くいかなくて、たくさん残業する。それってまるで我々じゃないかと思ったのだ。共感とは大事なのだなという事を思った。
彼女らの立場は、映画を見に行っている層にも刺さるだろう。

3年合わなくても、年数を飛び越えて昔の関係に戻れる。リアルだねって帰り道同行者と喋っていた。楽しくてタクシーに乗ってしまう。わかるよ。人と一緒だとなんだか気が大きくなってしまったり、ワクワクしたりする。あれはもう最初から山梨に連行する気だったのだろうけれども。

ゆるキャン△の登場人物達は、各々がとても自立した人間達だ。
久々に会っても抱きついたりしない。抱擁ではなく、接触とて、握手なのだ。
アニメーション表現として良く「女性が女性に抱きつく」というものがあるが、ぶっちゃけそんなに言うほど他人に抱きつかない。日本にはハグ文化があまりないと思う。
駅でハグしてる人たちもみるけど、全員がハグしてるわけではない。その辺がすごくリアルだなって思う(私は求められない限りハグをする事はない人間だからそう感じるだけかもしれませんが)。

当初企画していた事が軌道に乗り始めた所で別のプロジェクトが立ち上がって潰れ、そこからの立ち直り方が五者五様で、誰も人に当たらず、自分の中で解決しようとしたり、誰かと分かち合って解決しようとしたり、誰も他人を責めない。ちくわも責められない。なんて人間の出来た人たちなんだろうと思った。ゆるキャン△みてると、お互いがお互いを尊重することが上手なんだよなと思う。
(全員が互いの価値観がガッツリぶつかる様な所の話をしないから、ぶつかりようもなくだからこそ均衡が保たれているという事は思った。政治的な主義主張がこの子らには無い。ただ、政治的な主義主張があったとてこの子達は仲良くできんじゃないかなという事を思う。ブックスマートという映画の、あの二人の様に)

そして、「軌道修正と折り合い」を覚えて、あの子達は目的を果たす。我々の仕事なんて大体そんなものだし、ほとんどが果たされないで終わることの方が多い。
(昔住んでた街では土器の破片なんかその辺から死ぬほど出てきてたので、土器一つで開発が止まるなんて、過去を大事にしているんだなと思った)


仲が良かった学生時代の友人に会い、自分を取り戻し、過去の自分に出会う。カブの演出に胸がグッとなった。好きを力にしている人達は強いなと思った。

人間の優しい所だけを切り抜いた映画なのだなという風に思った(恋愛が絡んでこないのも良い)。
時間は止まらないし、変わらないものもない。だけれど、キャンプが彼女らを再開させてくれる。「大晦日に逢おう」というのは、中々理に適った選択だなと思った(ブラック企業でも大晦日は休める確率が高い)。


そして私個人、現実と映画を見比べた感想としては、
こんなにみんな「家族」に恵まれてんの??っていうことはどうしても思ってしまう。
まず学生のうちから女の子のソロキャンしても良いっていう過程がファンタジーなんだよな。
ソロキャンやる女性はそれなりに武装をしなければならない。そういう点がリアルでは無い作品なので逆に見ていてノイズに感じることはある(そういう所以外のノイズはあんまり無いと思う)。

家庭が恵まれてるから大丈夫、という話なのか、リンちゃんが全部自分で出来る子だからなのかはわからんけど。
手綱を手放す父母、見守る祖父、尊重される優しい世界。
未成年の大晦日の過ごし方を選択させてくれる親達。いやいないだろ。いるのか?ラブライブ無印でもそういう描写あったけど全員人間出来すぎでは?私時々レッサーパンダでは親の手伝いのために放課後カラオケに行けない描写があって、すごくリアルに感じたから余計にそう思うのかもしれないけれど。

女性ソロキャンパーに声をかけるクソ出会い男みたいなのはこの世に存在している。「声の掛け方」というブログを書いている人もいた(炎上して記事を消していたけれど)。爆ぜてくれ。
キャンプ場の管理人がどうしようもない人間だったりすることもある。ゆるキャンにはモデルがいるからそんなことはないのだろうが。こんなに優しい世界ばっかりだったり良いのに。強盗や強姦やマンスプに怯えるのはいつも女である。出会おうとするな。出会うならペアーズの中でキャンプ趣味の人を見つけてくれ。あるいはキャンプ婚活でも企画してやってくれ。
(優しさで声かけてくれる人がいるのも知ってるしそれに助けられることもある。ただ、怖い思いをする事も少ないという認識をお願いしたい所である。してあげる行為というのは、その人の為にしてるのではなくて、自分がしたいからしているという認知が必要だと私は思う)
(「女に穴さえついていればいい」という認識でレイプする人間がいる世の中である。物騒だね。趣味をしたいだけなのにんな事気にしなきゃいけないなんて最低なんだけど、もしものために備えは必要なんだよな…本当に心底ぐったりする。この国は性犯罪を「痴漢」だのと言い換えて、物事を矮小化するから、自衛しなければならないなという事を常々思う)


上に書いたのは嫌な側面の話。
ゆるキャンの影響で、女性達もキャンプを楽しめる様になっていたらいいなあという事を本当に思ってるし願ってる。でもそういう人がYouTubeに沢山いるから、きっと増えたのだろう。
創作は現実に影響を与えるものだ。この映画の様にのびのびとキャンプを楽しめる人が増えると良い。生存者バイアスで、酷い目にあった人は出てこないからこそ、尚の事である。

今を生きる我々に向けた温かな映画だったと思う。



さりげなく雪山装備整えていたのすごいなと思った。