のらくら備忘録

忘れたくない事と忘れたい事を書く。節約とポケモンが趣味の浪費家。

偽伝春琴抄を観に行った話

圧倒される舞台だった。
あっという間に過ぎ去ってしまった舞台だった。
1時間なのに数時間の時を経た様にも感じたし、面白かったので時がぎゅっと凝縮された様にも感じた。
ともよちゃんは踊りもできるんだ…と思いながら見ていた。静かな立ち上がりからの古文で捲し立てる様にはじまり、世界にグッと引き込まれる演出、背景、彩。

その後、現代語訳で説明してくれる親切仕様なんだな、と思っていたら実はここが伏線だったという仕掛けに唸った。
あんたらと私は違うと突き放す時に現代語で喋らぬ所が、春琴の春琴たる所を表している様に思えた。

私が心に残ったシーンは、暴力からの被虐心、愛情と自分の為に尽くせという心からの愛情からの連なる暴力、耐え忍ぶ体への被虐心と絶頂のシーンがとても良かった……フィクションの中の暴力は好き。暴力は愛情だなんて最低ですね(フィクションなので最高ですね)。暴力シーン鬼気迫る所で、もっと尺が長くても良かったな…みたいな気持ち。後ろの墨を落としたような演出も好きでした。
その場に佐助の姿が見える様な、諦めて受け入れる様な、全てを悟って春琴を受け入れる様な、そんな器を感じてゾクゾクした(ちなみに私は谷崎未読なのと映像作品などでも見たことないのでまじのお初のやつでした)。

同じ世界に来てくれたはずなのに、逢えず一人になってしまうという残酷さよ。たまらん。現代が顔を出すという解釈だからできることだな。

結婚だなんて有り得ないという所が本当に膝を打ちたくなる位にあの話を美しいものにしているんだなという事を思った。

何度か舞台中で歌われた歌を、最後に改めて歌い直したのを聴いて、「ああここもう一回見たいな」「あそこはどうだったかな」という気持ちに囚われた。土日のチケットはもう予約分は売れてしまっている模様でした。そりゃそうだな。だってすごい面白かったものな…。


一人芝居と言いながら、複数人の芝居を見た様な感情になりました。語り部と春琴と佐助と弟子と師匠は見えた気がする。
あれだけの声量と動きを一人でやり続けて、一切休憩なし、声も掠れない、プロってすげえな…。
後ろでピアノの方が情熱的に演奏している姿も良かった。演出もおもしろかった。映像系に特化している劇場なのだろうか。洒落込んでんなあ。




昨日思い立った知人に誘われて行ったのだがとても楽しい舞台だった。青山クロスシアターという所、渋谷シアターイメージフォーラムのご近所だった。当日引換券のおかげかB列という配置。めちゃ近かった。黒沢ともよちゃんは黄前ちゃんやフォスフォフィライトなど、演技が恐ろしくて背筋がゾワゾワするような魅力的な演技をされる方だなと思う。
いや面白かった。一人芝居ってすごいな。


#偽伝春琴抄
#黒沢ともよ