のらくら備忘録

忘れたくない事と忘れたい事を書く。節約とポケモンが趣味の浪費家。

劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデンによせて

泣きすぎて瞼が重い。
この文を書きながら泣いている。

アニメも含めてネタバレと私の価値観を沢山含みます。たぶん。
京都アニメーションに対する感情の話もしますので、辛い人は見ちゃだめです。書いてても涙がとまらないので。



土曜日に「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を見に行った。
新宿EJアニメシアターには人がたくさん入っていた。
映画館には啜り泣く声が響いていた。
嗚咽を漏らさない様にしながら見るのに必死だった。
オープニングにコチコチと時計の音が聞こえた。

ヴァイオレットの成長。
「あい」が何かわからなくて、「してる」が動詞である事しか理解できなかった彼女が、少佐を理解したいという思いであそこまでたどり着いた。
選択できる、人間になった。

少佐が全てであった彼女が、あんな風に最後の手紙を書くだなんて。
あまりにも美しくて、深い愛情に裏打ちされた選択だと思った。もう会えなくても、それでもいいと、生きていてくれて嬉しいと、そういう言葉を伝えるだなんて、あまりにも悲しくて、なみだがとまらなかった。少佐を目の前にして、言葉を紡げなく彼女が、愛おしかった。

少女兵として、彼女を働かせてしまった後悔は消せない。「火傷」はそう簡単に消える訳がない。

帰還兵達はPTSDで苦しみ続けている。そういうリアルさを、隠さずに書いている故に、戦争映画であると思った。

私は男女の安易な生殖エンドが嫌いだ。
この映画は、二つの人間を主軸にして、ヴァイオレット・エヴァーガーデンという人間を描いている。彼女と少佐がどうなったかは、明確に描かれていない。そこに好感が持てた。指切りをする。男の子は死んだ。でも、彼が教えてくれたことは、残り続ける。
余白が美しい。そう思った。

生きている人間達、居なくなってしまった人達に向けた、傷付いても生きてく人間達に向けられた、剥き出しの優しさが流れ込んでくる様な作品だった。


エンドロール中に身体が震え、涙が止まらなかった。もう、新作の映画のエンドロールでは見られないのだろう、好きな人達の名前が流れていく。沢山の見覚えのある人達の名前だ。

あまりにも辛い、当たり前にある筈の存在は、当たり前では無く、損なわれてしまったのだと、どうしたって思ってしまう。

作品は作品として受け止めて欲しいと思って作られているのだろうけど、まぜこぜにせずに見ることが私にはできそうもないを
いない人達の事を、想わない訳にいかない。50年分の手紙を読み返しながら生きていくよ。

TRUEさんの「未来のひとへ」。
今、遺されてしまって、生きてしまってる人間達の、苦しみを歌ってる。
死んでしまった人たちがきっとこう思っているだろう事を、優しく歌っている。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンの作中で何度も何度も繰り返されていた、手紙でなら書ける、そういう感情もある。
だからきっと、手紙というのは廃れず、今も残り続けている。

人は死ぬ。必ず死ぬ。
ただ、その人間が生きていた事で、周りに生まれた感情は消えない。死んだからと言って、存在の全ては消えない。消そうとしたって残り続ける。生き残ってしまった者達は、居なくなってしまった存在の空白を、その人の存在を抱きしめたり、手放せなくて、「何を見ても少佐の思い出に結びつく」様に、我々も、そうやって生きていくしかない。

エンディングが終わった後、コチコチと時計の音が聞こえた。ヴァイオレットが、歩いていた。
未来と過去を繋いで、歩いていた。


『愛した日々は消えず、過ちは色褪せぬまま残る、あなたと生きていく。』


「生きる」と「死ぬ」は連続した一つの事象だ。

これは私の価値観だが、「生まれてしまった以上は死ぬまで生きるしかない」という気持ちで生きている、「生きる」ことは「生きている」という意味しかない。
一応仏教徒なのだが、敬虔な人に言わせたら「意味の無い命なんてない」と言われそうだなと思う。
意味があると言われ続けてきたからこそ、わざわざそういう風に表明したくなるのかもしれない。

TRUEさんの「WILL」という曲。
この作品のテーマを表している。
死も世も、存在するものであると。
生きていく事を選ぶ以上、生きていくしかないのだと。

あの事件で失われた人たちの魂は、あの方々の心は、次の世代に紡がれている。悲しいけれど、いなくなってしまっても、全部消えるわけじゃない。
心の中に存在するのだと、そういうことを思った。そりゃそうだよ。だってたかが作品の1ファンだって、こんなに苦しいんだもんなって思う。

善く生きていく事で、救われるのは自分の魂である。そんなふうに思う。

素晴らしい映画だった。
号泣しても良い上映回を映画館が開催してくれないだろうかと思った。