のらくら備忘録

忘れたくない事と忘れたい事を書く。節約とポケモンが趣味の浪費家。

今と昔、推し本屋の話

『ほぐします、肩の凝り。ほぐします、首の凝り。コリをほぐして、スッキリクイック24』

この文句を聞いて、一つの本屋が浮かぶ人間がいたら、きっと同じ時期に同じ本屋に通っていた人間だと思う。

コミックZINという本屋をご存知だろうか。
数年前まで、新宿西口徒歩5分に店を構えていた同人誌を取り扱う本屋だ。

新宿からは撤退して、今は秋葉原にだけ店舗がある。

私は新宿のコミックZINが大層好きで、新宿に行くと必ず立ち寄っていた。
同人誌の取り扱いをしている店なのだが、一次創作や、百合創作など、簡単に言うとコミティアが常に店内で開催されている様な雰囲気の店だった。

百合本の棚がある店だった、初めて百合棚が出来たときはものすごく感動した。
商業百合で欲しい本があれば、発売日に行けば絶対に手に入った。

そこまで有名ではない漫画本も、取り扱いがあった。だから、困ったらコミックZINに通う様にしていた。楽園コミックの品揃えが極端に良かったと言えば、どんな雰囲気かわかってもらえるだろう。店内を舐り尽くす様に歩くと、必ず良い本に巡り会えたものだ。

コミケのカタログは紙派だったので、いつもコミックZINで買っていた。手拭いは部屋の掃除に使っていた。

コミックZINは好きな本屋だったので、いろんな友人達に紹介した。こんなに自分のツボに入る本屋があるのだという事が大層嬉しかった。ポイントカードがあって、ポイントがすぐ貯まった。しょっちゅう割引もしてもらっていた。店員さんと互いに顔を覚えていた、ささやかなエレベーター内でのやりとりが嬉しかった。言葉を交わしたことは無かったが、お互いに存在を認識していた。

そんなコミックZIN新宿店が無くなってから、しばらく不貞腐れて漫画を買わなくなっていた。

秋葉原店に行くことも勿論あったが、そもそも秋葉原と新宿では、行きやすさが全然違うのだ。新宿の方が臭い人少ないし。

新宿は個人的に好きな街だが、秋葉原は未だに不慣れなところがある。街全体に漂う雰囲気というのだろうか。好きなのだが、受け入れられている感じがしない。何を言ってるのだろうとおもうだろうが、そんな気がするのだ。


そして、つい最近になって、新しく推しの本屋ができたことに気がついた。

場所は伏せる。
気がついたら好きになっていた。雑誌を買いに何度か行っていたら、「あれ、ここの本屋居心地がいいな」と思っていた。

入り口がとても狭く、店内は広い。雑居ビルの一階全部が本屋になっている。地元の人間達に広く愛されているのだろう。昔から街に根付いている雰囲気がある。

同人誌の取扱はなく、街の本屋だ。
そこに通い始めてから、活字本を買う事が増えた。
本屋全体に漂う雰囲気が好きだ。一体何がそんなに魅力的で惹きつけられるのだろうと自分なりに考えてみた。

まず一つ、個人書店だからなのかもしれないが、嫌韓の本やヘイト本の取り扱いがほとんどないのだ。大抵の本屋には、ヘイト本が平積みにされている。売れているからなのだろうが、売れていようがいまいが、そういう本が目に入る事がそもそもストレスだ。資本主義の悪い所で、幾ら悪い事が書いてあっても売れる物だから取扱をしなければならないのだろう。そういう本を見ていると悲しくなる。

西野なんとかとか、堀江なんとかとか、百田なんとかとかいう人間の本の取扱もあるが、絶対に平積みされていない。冊数も少ない。

それどころか、平積みにされているのはフェミズムに関する本の方が多かったりする。ツイッターで見かける本が、店内の目立つ場所に鎮座している。びっくりするくらいフェミズムの本がある。まじで売り場の限られた個人書店のラインナップではない。見ているだけで勇気が出る。幾ら個人書店とはいえ、売れない本は仕入れられない筈だ。裏を返せば買っている人間が一定数いるのだということにならないだろうか。
違うかもしれないが、私にとってはとても嬉しいことだ。

去年読んで無茶苦茶視点が広がった、「聖なるズー」というズーフィリアの人たちの本も目立つ様に置いてあった。なんというか、個人書店というよりも大型書店の特設コーナーかの様な雰囲気がある。

二つ目、漫画本コーナーには通路を塞ぐ様にたくさんの漫画が積まれている。まるでコミックZINみたいなのだ。

三つ目、静かで端末検索が出来る機械が置いてあるところだ。

四つ目、とにかく居心地がいい。
流れる空気が、色んな人間を飲み飲んで、静かな時間を提供してくれる。みんな声を潜めて話をし、一人で黙々と本を選び、特設コーナーに足を止める。
立ち読みを許してくれる雰囲気もある。
相当好きな人が勧めているだとか、好きな作家とかでなければ、なるべくじっくり読んで決めたいなと思っているところがある。試着みたいなものだ。じっくり選べることはありがたい。自分が納得して買ったものと、そうでないものでは愛着も違う。 

五つ目、カバーとしてかけてくれる紙の材質とデザインがシックで良い。匂いも好きだ。


つらつらと書いたが、私にとっては愛着のある場所になっている。そういう場所が一つでもあるというのは、ありがたいことだと思う。大きな本屋ではなく、そこの本屋で取り寄せて本を買う事が増えた。休日や夜の散歩の帰りに立ち寄るのが楽しい、ポイントカードも作った。

みんなブックオフで育ったという本を平積みしていたり、その土地にちなんだ人の本を積んでいたり、なんとも愛嬌のある陳列がされている。きっと本が好きな人たちが働いているんだろうなと思い、ニコニコしてしまう。そうだね、我々はブックオフで育ったんだよ。




今日は、同性婚に向けて世の中が動いた日だった。最終的には戸籍制度をぶち壊すのが目標の人間なのだが、結婚の自由が全ての人に開かれることは必要なことだ。 

どうか、他人の幸福を祈れる人類が世の中に増えてほしいと思う。困っている人間がいたら手を差し伸べられる様な人間が増えて欲しい。
これは祈りである。